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Buzsaki

Rhythms of the Brain Book Rhythms of the Brain

著者:G. Buzsaki
販売元:Oxford University Press
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この本は圧倒的に面白い。ただし、簡単に読める本ではない。ややプロ向けのテクストだといえる。しかし、ニューロサイエンスのプロの人は苦労してでも読むべき大作だと思う。

この本を読んでいると、クリストフ・コッホの『The Quest for Consciousness』を訳していて、脚注に詳細な情報が大量に盛り込まれているから、なかなか訳が進まなかったことを思いだした。BuzsakiもKoch並、あるいはそれ以上に、クドく情報を盛り込んでくる。おそらく、それはプロの読者を想定しているからだろう。プロの読者(科学者)というのは、常に関連した論文の情報を必要とする。それにしても、Buzakiの本は脚注が多くて、読んでもなかなか進まなかった。しかも、脚注に出てくる論文がおもしろそうで、元論文も読みたいが読みきれないほどだ。

基本的には、脳の中の振動現象(Oscillation)がメインのテーマだが、それよりも内容の幅の広さと、ここのテーマに対する洞察と知識の深さに圧倒された。

Buzsakiは章を普通の本のようにChapterと呼ばずにCycleと呼んでいる。最終章のサイクル13で、Buzsakiは意識(Consciousness)をどう考えているかを述べている。アプローチは違うが、Tononi (2004) の情報統合の理論と同じ結論にいたっている。神経のネットワークが意識を生み出すためには、ネットワーク内での情報の統合が重要だという考えだ。

その理論から、意識を持たない脳の部位の例として、小脳と大脳基底核をあげている。どちらも、局所的には神経間の結合があるが、空間的に離れたニューロン間の結合がない(別の言葉でいうと、スモールワールドネットワークになっていない)から、局所的に処理された情報が全体に伝わらない。そのような、ネットワークには意識は宿らないだろうといっている。

それから、最終章にいたるまでのCycleで、抑制性のニューロンから構成されるスモールワールドネットワークに、いかに周期的な神経活動の振動が生じるかなどが詳しく書かれている。スモールワールドになっていない小脳には、だから振動はない(周波数の高い振動はあるようなことも書いてあった)。

それから、フィードバックのループによる時間を越えての情報の統合が意識の生成に不可欠だといっている。

まとめると、局所的な情報処理を全体で統合することが重要。そのようなネットワークはリズムのある神経活動をもち、利用している。だから、意識と振動の関係は深い。本全体を読むと、もっと微妙な議論をしているが、強引にまとめるとこういう結論だろう。

意識についてはさほど書かれていないが、VanEssenの「何で脳が決まった形に折りたたまれるかについての仮説」 とか、自分が知らなかった論文があちこちにでてくることが面白かった。


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コメント

やっぱ、この本、俺らがまた翻訳すべきか?
もう誰かやってんのかな?

投稿: 土谷尚嗣 | 2007年2月12日 (月) 21時33分

土谷は、訳したい?これを訳したら、かなり時間とられるのは間違えない。週末をつぶして一年ぐらいかかるだろう。

わざわざ時間かけて訳して、自分のためになると思える、いい本だけどね。もう訳している人がいるんじゃないか?著者に直接聞いたらそれはわかるか。

やりたいけど、自分のペーパー書く時間がなくなる。。


投稿: 金井良太 | 2007年2月12日 (月) 22時00分

ネイチャーに書評が出てた。

http://www.nature.com/nature/journal/v446/n7131/full/446027a.html

投稿: 金井 | 2007年3月 2日 (金) 23時26分

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