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P意識とA意識(つづき)

前回、P意識とA意識の概念的なことについて書いた。そして、P意識というのを実験的にとらえるのが難しいのではないかということを主張した。

言葉の面からだけ考えていると、すぐにP意識は考える必要がないとか、極論に走りがちになるので、具体的な事例を吟味しながら考えていくべきだろう。

で、今回は、P意識とA意識に対応する脳活動について書こうと思う。いくつか重要な論文があるから、ここで紹介しておこう。


de Lafuente & Romo (2005) Nature Neuroscience

このペーパーでは、サルの指に触覚刺激を、知覚できるかぎりぎりの強さであたえて、そのときの反応をS1のニューロンとMPC(medial premotor cortex)で測っている。S1は、触覚に反応を示す部位だが、サルの報告する感じたか感じなかったかに対応する反応を示していない。一方、MPCのニューロンはサルの主観的な判断に対応する反応を示した。このS1の反応と、MPCの反応はもしかしたら、p-consciousnessとa-consciousnessに対応していうると解釈できる。

さらにこの実験でおもしろいのは、直接MPCのニューロンを電気刺激するとサルが感じたと報告することだ。もちろんサルはしゃべれないから、そのときに何かを感じているのかはわからない。でも、これってa-consciousnessありで、p-consciousnessなしという状況ではないか。


Hanks et al. (2006) Nature Neuroscience

これは、LIPを刺激して、知覚に関する意思決定にバイアスをかける実験。上の論文と状況は似ているといえる。a-consciousnessを変化させているのかもしれない。

やっぱり、人間で、a-consciousnessを電気刺激で変化させると、何を感じるのかが気になる。


Super, Spekrijse & Lamme (2001) Nature Neuroscience
Ned Blockのレヴューでも出てきた特に大事な論文がこれ。この論文では、意識的知覚と深い関係にあると考えられているV1のcontextual modulation。しかし、この論文では例えcontextual modulatiionがあったとしても、decision criterionが違うと、答えが「見えなかった」になるという状況を示している。このような状況は、p-consciousnessあり、a-consciousnessなしと思われる。

実際に、脳の活動部位と対応関係をつけるとこで、p-consciousnessとa-consciousnessを考えるのがいいだろう。今、自分が興味をもって研究しているテーマの一つに、a-consciousnessを操作したときに、p-consciousnessがどうなっているかという問題だ。人間でそのような状況を作れば、具体的にどうだったか聞いてみることができる。今は、出力に近い行動にバイアスを無意識のうちに与えて、そのときの知覚の判断がどうだったかを調べている。しばらく行き詰まっていたが、このまえのpost-decision wageringの論文をみて、それで客観的なデータになるかもしれない。



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コメント

>> かなり専門的なコメントです. <<

金井が最近insular や DLPFC に注目してるのも、俺と同じ理由な気がしてきた。

criterionや、decision って意識を研究する上で非常に重要だ.
とくに、post-decision wagering の論文は decisionと sensory perception の
関係を考える上で非常に参考になる。

今のところ、P- と A- の区別と、
working memory と decision criteria  の問題が表裏一体な気がしている。

ただ、金井の mask や attentional blink についての前回の議論は
俺の中では納得いっていない。

P−とA-に関する土谷仮説
1. detection threshold が discrimination/recognition threshold よりも圧倒的に低い場合は P-有り、A-無しという状況になる。
2. A- は、ほとんど confidence と一体で、criteion の影響があまりない。

すなわち、peripheral vision や、sperling の fleeting memory の実験などは、
なにかが「見えた」ってのは確かに感じるのだが、
それがなんだったか分からない。 リポートできない。

普段は、working memory に入ったものは、
強い自信をもって「見た」と言えるから、A- なのではないか?

自分で書いていて、d' と criterion がそれぞれ、P- と A-に対応する気がしてきた。

そういう論文今度書こうか?

投稿: 土谷 | 2007年2月19日 (月) 14時29分

もしかしたら、同じような考えに収束してきてるのかもしれない。それはいいことだと思う。

Signal detection theotryからAとPについて論じるのは、すでにLammeとNed Blockに提案者としての部分をとられてしまっているから、いまからそれだけで論文を書くのは弱いかもしれない。

でも、microstimulationの論文とかも含めて総合的にまとめたら、多くのデータを理解するのに役に立つフレームワークができるとおもう。

それと、 choice blindnessなんかも、a-consciousnessだけを変えたらどうなるかという観点で論じることができる。

LIPとFEFの機能のちがいみたいなことの理解にも役に立つ。実は、まえからやってるfrontoparieto networkの内部の構造を調べるというところが動機で、最近書いてるようなアイデアになった。

また、こんど時間を決めて、じっくり話そう。


投稿: 金井 | 2007年2月20日 (火) 20時45分

> さらにこの実験でおもしろいのは、直接MPCのニューロンを
> 電気刺激するとサルが感じたと報告することだ。もちろんサル
>はしゃべれないから、そのときに何かを感じているのかはわ
>からない。でも、これってa-consciousnessありで、
>p-consciousnessなしという状況ではないか。

この論文きちんと読んでないので、ゆるいコメントでごめん、、、
(読めよって?)
V5TMS motion phospheneは高次感覚系からV1への
フィードバックでp&a両方あり。
運動系の刺激だと感覚系までは戻らないからaのみということ??

投稿: まさ | 2007年2月23日 (金) 04時01分

これは、S1の反応が間接的に引き起こされてる可能性がある。そういう意味では、MTにTMSでV1へのフィードバックでpっていう状況と同じかもしれない。

いま、じゃっかんfrontalにtmsして、見えなくなるっていうのがあるか探っていて、うまくいけば、attentional blinkがtmsで引き起こされるという状況がつくれるかもと期待している。

投稿: 金井 | 2007年2月23日 (金) 05時05分

モデルなので真に受けなくていいけど、Dehaeneのglobal workspace
によるABのメカニズムを考えると、ちょっとやそっとじゃ、
引き起こせないような気がする...

意味があるが故に、一時的に”天下をとる”(global workspaceで
igniteする)T1の代わりに、それ自体は意味をもたないTMS刺激を
用いるということだよね??
V1の2連打で脳が”祭状態”になって知覚が生じること(phosphene)
を考えると、まだ2発打ちの方がいけるような気がするけどどうでしょう。

(global workspaceのignitionはLamme的なawarenessの捉え方とほぼ同じだと思う)

あと、parietalの可能性は??
ABでどこがbottleneckになっているかというのは、だいぶ
議論されているようだね。最近Florenceとメールをやりとりする
機会があって、彼女がよく勉強していた。

結果、楽しみにしています。
でもほどほどに。。。


投稿: まさ | 2007年2月24日 (土) 02時23分

Dehaeneのglobal workspaceは意識のモデルとしてはいいとおもうけど、ABのモデルとしてはいまいちだと思う。PotterのラボにいるBradは、DehaeneはLag1 sparingを説明していないと批判している。Lag0 sparingがあたかもLag1 sparingであるかのようにグラフにして、ズルをしている。

ABに関しては、Dehaeneのモデルのように全体でのニューロンの同期が、一部のハブが中心になって起きているのではないかと思う。たとえば、このMEGの論文からは、右parietalがそういう役目を果たしていると考えられる。
http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/101/35/13050

florenceは日本に来れそうですか?彼女がABとかやってるの?


投稿: 金井良太 | 2007年2月25日 (日) 12時43分

さすがですな。
Dehaeneの論文、よく読みなおしてみる。。。

TMS ABプロジェクトで、想定されるTMSの役割は??

同期が起きるか否かの過渡期に、ハブにぶつけて、逆にT1の効果を
つぶすというのが素直な気もするがこれではあまり意味ないね。
(TMS induced neglect?)


TMS自体で”ニューロン同期祭り”を起こすには、かえって、
上流のシステムを叩いた方がいいということも考えられるけど
どうでしょう?
V1phospheneのほうがMTphospheneより断然楽に出せるし、
Libetの話もあるし。

投稿: まさ | 2007年2月25日 (日) 14時58分

Florenceはくるかも。
crossmodal ABに取り組んでいたらしい。

投稿: まさ | 2007年2月25日 (日) 15時02分

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