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禁煙と脳

タバコをやめるのは、ものすごく難しい。禁煙をしていると、頭の中にあれやこれやと言い訳が浮かんできてまた吸いそうになってしまう。基本的に喫煙者の多くは、いつかやめると思いながら吸っている。吸う必要がないとわかっていながら吸ってしまうのは、ものすごく苦しいことだ。今のところ幸いにも、禁煙に成功して、吸いたいという感覚もない。

タバコを吸わずにすむ幸せな人たちは、中毒っていうのがどういう感覚なのか想像がつかないかもしれない。あえて似てるものがあるとすると、ダイエット中の空腹感かもしれない。寝る前に食べないで寝てしまえばいいのに、小腹が空いてるからたべてしまう。そういう感覚だ。

禁煙について面白い論文が最近でた。サイエンスという雑誌に掲載されたNaqvi et al. (2007)の論文だ。その論文では、脳の一部のインスラ(insula、正確な日本語の解剖学用語だと島(とう)という)という部位が脳梗塞などが原因で損傷をうけると、タバコをやめるときの、あの「どうしても吸いたい」という感覚がなくなるということが示されている。ただ、よく読むと、insulaに損傷があった人が必ずしも、他の場所に損傷があった人よりも禁煙しているというわけではない。場所に関わらず、脳に問題があったら、タバコをやめようと患者はみな考える訳だ。

そとから、磁場で脳の活動を一時的におさえるTMSという装置があるが、もしかしたらTMSをインスラにあてることで、一時的なタバコを吸いたいという欲求を押さえることなんかもできるかもしれない。現実的には、深いところにあるから、その途中の場所を全部刺激してしまって、無理だろう。

インスラという脳の部位は、何をやっているところなのか?アントニオ・ダマシオは、内蔵感覚として存在する感情を意識的に感じるときに重要だと提唱している。無意識の感情を意識の感情に変換する場所だというアイデアだ。(ダマシオの論文 )正直なところ、ダマシオのいうような感情と意識の関係は、よくわからない。まだ消化できていないから、自分の態度が決まらない。

意識を別にしても、かなりいろいろなことにインスラは関わっているようだ。コカインの禁断症状の時に活動し、熱烈恋愛中に好きなひとの写真を見たりするときにも活動する(Bartels & Zeki (2000) )。なんとなく恋と中毒がにているのはわかるような気がする。それから「痛み」に関わるエリアとしても知られている。

個人的なニコチン中毒経験からして、インスラは禁断症状を意識するのに関わっているかもしれないが、中毒そのものがそこにはないかもしれないと思う。中毒自体は、もっと無意識な状態で存在していて、無意識のうちに思考などにも影響を及ぼしているように感じられる。



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コメント

この前 Trends in Cognitive Sciences に accept されたレビュー
"Emotion & Consciousness" by Tsuchiya & Adolphs
http://emotion.caltech.edu/papers/TsuchiyaAdolphs2007Emotion.pdf

の中で、インスラがどう感情(emotion)や感情を意識するとき(emotional feeling) に関わっているかを書いたので参考にしてください。

意識との関わりで、 alexithymia (アレクシサイミア)という感情の障害が面白い。
(英辞郎で調べたけど日本語で対応する単語はないみたい)

潜在的には健常者の中にも多くいるらしいが、
このアレクシサイミア患者は、感情を口に出して表現する事ができないらしい!しかし、色々調べると、どうやら、感情を我々と同じように経験しているようだ。

もしかしたらblindsight(盲視 もうし)の感情版かもしれないし、
感情のphenomenal consciousnessのアクセスがないのかもしれない。

>>そのうち、phenomenal vs access consciousness についても
解説おねがいします。

投稿: | 2007年2月15日 (木) 05時00分

レヴュー、読ませてもらったよ。

alexithymiaが、phenomenal consciousnessがあるのに、access consciousnessがないって言う解釈は、論理的にはありえるけど、phenomenal consciousnessがあるかもしれないっていうのはless parsimoniousな印象をうける。

同じ論理で、blindsightもphenomenal consciousnessがあるけど、access consciousnessがないっていえる。

さらに、access consciousnessがないのに、なんらかの無意識の情報処理が行われている証拠があれば、同様にp consciousnessがあるって言えるのか。定義上operationalには決まらない、科学的に意味のない仮説なんじゃないか?

見えない刺激でプライミングとかは、p-consciousnessあり、a-consciousnessなしとするのか?

たしかに、binocular rivalryなんかは、p-consciousnessもなくなっているように思える。一方で、RSVPの時の覚えられなかった文字なんかは、p consciousnessがあったけど、a-consciousnessがないと解釈しても良さそうだ。その境界はいったいなにが決めているんだろう。

たしかに、p vs a consciousnessの話もそのうちじっくりやった方がいいだろう。

投稿: 金井 | 2007年2月15日 (木) 12時50分

mixiでこのブログを知ったのですが,これからはこちらにお邪魔しようかと思います.宜しくお願いします.

機会があれば,研究の話などお聞かせ願えればと思っております.

alexithymiaの件ですが,私も英辞郎を使っていますが,
「無感情症、感情言語化喪失」となっていました.もしかした医学用語辞典ファイル(.dic?)が存在するのかもしれません.

投稿: ちゅんた | 2007年2月16日 (金) 10時37分

>ちゅんたさん

mixiでもコメントいただきましたね。

研究の話も、まとまった話になっているものは、少しずつここに書こうと思います。

コメントも遠慮なく、気になることはいくらでも突っ込んでください。

投稿: 金井良太 | 2007年2月17日 (土) 02時09分

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