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心の哲学について

 

今日、なにげなくThe New Yorkerを読んでいたら、哲学者のChurchland夫妻についての記事があった。なんか、すごくかっこいい夫婦のように書いてあった。たぶん、本当にかっこいい夫婦なんだろう。

その記事にも書いてあったけど、意識の問題を解決するのは哲学者ではなく、NeuroscientistだとChurchlandは言っている。なんで脳を科学的に研究していくことが大事なのかを説明するための例え話がでてきた:

(引用開始)

"You're Albertus Magnus, let's say. One night, a Martian comes down and whispers, 'Hey, Altertus, the burning of wood is really rapid oxidation!' What could he do? He knows no structural chemistry, he doesn't know what oxygen is, he doesn't know what an element is – he couldn't make any sense of it. And if some fine night that same omniscient Martian came down and said, 'Hey, Pat, consciousness is really blesjeakahgjfdl!' I would be similarly confused, because neuroscience is just not far enough along."

(引用終了)

まだ、現代の脳科学は化学にとっての酸素のようなものを見つけていないのかもしれない。

自分の中で、意識を研究するための哲学的問題は、ひとまず「あまり気にしない」という方針だ。それはここでChurchlandが言っているように、Neuroscienceが根本的に進まないことには、あれこれ考えても解決しないだろうと思うからだ。そして、科学が脳に関する事実を積み上げ、それに平行した情報理論の発展から、意識の問題に迫るアイデアがでてくるだろう。

いまから7年前に、チャルマーズの『意識する心』 を英語で読んだ。そのときは、まだ意識を研究したいが、いったいどうしたらいいのかと思っていたときだった。まだ、世界でどんな研究がなされているか、把握できずに日々勉強していた頃だ。(まあ、状況は今も同じようなものかもしれないけど。)

チャルマーズは哲学的な視点から、意識は科学では解明できないと主張して、ハードプロブレムと呼んでいる。その根拠は簡単に言えば、「主観的感覚(クオリア)が物理学の法則から導かれる性質のもの(supervenient on the physical)ではない」ということだ。意識というのを一つの新しい物理法則として付け加えるべきではないかとも主張している。その拡張の一環として、汎神論を提唱している。つまり、あらゆる情報処理をしているものは意識があると見なすべきではないかというのだ。温度計は、温度のクオリアを感じていると考えようというのだ。

 

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この議論でいつも気になるのは、温度計のどこからどこまでが温度計なのかということだ。分子1つ1つにクオリアがあると考えるべきなのか?もし、水たまりに映る景色が、水たまりによって意識されているのなら、どこからどこまでが水たまりなのかを物理的に定義する方法が必要だ。何らかの方法で、統一された情報の受け手であるセルフを構築しなければ、クオリアを持っている主体が存在しない。だから、情報を統合して「主体」というものを構成することが意識が生まれるためには重要だろうと考えていた。

上のような漠然としたアイデアにすることしかできなかったが、Tononiが情報理論を用いて上のような問題意識に答えてくれるような、意識の情報統合理論を提案している(Tononi (2004) )。

クオリアの問題に挑もうと考えている人は、一度はチャルマーズを読んで絶望感と、こんなに身近にエキサイティングな問題が潜んでいたという喜びを味わっておくべきだろう。私には、一瞬すべてのニューロサイエンスが無力に思えた。でも、今ではまずは、blesjeakahgjfdlを探すところから始めることの方が楽しいだろうと思うようになった。



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動物の中で人類だけが、仲間と共感する存在感を錯覚として固定できるように、脳の神 [続きを読む]

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