« Healing Grid | トップページ | ヘビはなぜ怖いか? »

時間と記憶と前頭葉

ここしばらく毎日、時間の長さをどうやって脳が計算しているかというテーマについての論文を読みあさっていた。例えば、「3秒待っててくれ」といわれて、「3秒たった」とわかるというのはどういうことなのか。

クリストフ・コッホは意識の探求の中で、3秒まってから反応するという一見単純なタスクが、「意識のチューリングテスト」として、動物などに意識があるかどうかテストするのに使えるかもしれないと提案している。

時間の知覚の過去の研究から「3秒」というのは脳にとって「0.5秒」とは全く違う別の測る仕組みを必要とすると考えられている。Lewis & Miall (2003) のレヴューでは、3秒のタスクにはright PPCとrightDLPFCが関与していて、0.5秒の方はSMAや小脳などが関与しているとうイメージングのデータがまとめてある。脳にとって3秒というのは長時間で、その間の情報を統合するのに注意やワーキングメモリの機能が必要になるとうのはあまり驚きではないかもしれない。

でも、DLPFCの右だけがこの3秒タスクに重要だというところが面白い。TMSの実験でも右にrTMSをするとreproduction(刺激の出てた時間を、呈示後に自分でボタンを同じ長さだけ押すタスク)が、短くなるが、左のDLPFCでは変化がない(Jones et al. 2004 )。(Rao et al. (2001) のイメージングも参照)SMAの刺激は効果がなかったとしているが、ちょっと解析の仕方に不満があるから、いまのところこの結果は自分のなかで保留。それとVallesi et al.の論文でもrDLPFCへのTMSが時間感覚へ影響を及ぼすことを示している。Vallesiの論文ではforeperiod effectという効果を利用してimplicit(潜在的な)時間感覚を調べている。この手法は今後使えそうだ。どういう効果かというと、刺激が出たらできるだけ早くボタンを押してくれといわれていて、待ち時間が長いと、反応時間が短くなるという効果だ。単純だけれど、ShadlenなどがLIPでの時間処理をhazard functionだと解釈していることなどと整合性があって、computationalなモデルにしやすい実験系だと思う。

それから、3秒を頭のなかで数えている間に、他のことに注意をむけると干渉が起きるかという心理学の実験がものすごい数の論文になっている。とく重要なのが、Fortin et al. (1993) だ。2秒間たったらボタンを押すというタスクで、その間にVisual search(注意を使うタスク)をしても主観的時間の長さは変わらないのに、Sternberg task(たとえば、プローブとして見せられた1文字が、記憶の中の3文字に含まれているかを答えるタスク)では、ボタンを押すまでの時間が長くなる。これは、注意よりは、ワーキングメモリの操作が時間感覚に影響を及ぼすことを示している。そのあとにも、Fortinたちはこの系でたくさんの論文をだしている。ここに書いたproductionのタスク以外にも、encoding中でも同じ結果になることが示されている。

ただ、Fortinのタスクは、時間を評価中に、メモリーに情報を蓄えておくことと、その情報を操作することの両方を要求するから、両方の要素が影響しているようだ。Field & Groeger (2004) は、その区別を付けた実験をして、どのような情報をワーキングメモリに蓄えていると時間のestimationに影響がでるか調べている。音の高さや、時間の長さをワーキングメモリに保持していると影響がでるが、timbre(日本語でいうと何?)やluminance(日本語でいうと輝度)を覚えていても影響は出ないらしい。

もうすこし、顔とか空間の位置とかワーキングメモリのイメージングをしている人が使ったような刺激に対するメモリーと比較すれば、PFCの中での位置関係が干渉関係と対応しているか調べることができるだろう。

それから、3秒タスクはラットでそうとうやられていて、ラットはできるからきっと意識があるんだろう。今のところ読んでいるのは薬理学的な実験ばかりだが、電気生理学的手法と組み合わせたらそうとう強力な実験系だ。今のところ読んでる論文では、basal gangliaとfrontal cortexの関係の話が多い。まだ全貌が見えてこない。もうしばらく勉強の必要あり。最近、久しぶりに仕事もせずにひたすら論文を読見続けていて楽しかった。たまには、一週間読み続けるだけの週がほしい。


にほんブログ村 科学ブログへ ←もし、このブログが役に立っていたら、これをクリックしてください。

このブログのランキング

 

|

« Healing Grid | トップページ | ヘビはなぜ怖いか? »

「論文紹介」カテゴリの記事

コメント

はじめまして.時間についての研究を調べていた際に,たまたまこのブログを拝見しました.とても参考になりました.他のところもこれから読ませていただきます.

投稿: yan | 2007年4月14日 (土) 12時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207912/5685001

この記事へのトラックバック一覧です: 時間と記憶と前頭葉:

« Healing Grid | トップページ | ヘビはなぜ怖いか? »