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更新:日本帰国マニフェスト

しばらく更新できずにいて、楽しみにしていてくれたひとには申し訳ない。

実は、ハーバードのVisionLabで、自分にとって当分できなそうな本気のPsychophysicsに挑戦していました。今、ハーバードのラボはPatrick Cavanaghがパリに行ってしまうということで、その直前にVisionLabの雰囲気を味わいたいというのと、自分がどこまでPsychophysicsができるかという挑戦をしようと必死でした。まだ、その結果をペーパーにできるかというのは難しいけれど、やれるだけのことはやったなと思っている。

九月からUCLでVincent WalshとHuman FrontierのFellowshipで、もうすこし修行をしようと考えていて、その前に自己ベストのPsychopysicsをしようと実験をしていた。

移動するとなると、けっこう準備が大変で時間がとられて、なかなか更新できずにいた。

今は、ビザを取るなどの理由で日本に一時帰国している。それから、ブログを書いたことのあるひとには、共通の悩みだろうけど、実際に研究していると内部情報とか科学者の中での、政治的な配慮などの情報が入ってくる。それが一番暴露すると読者にとっては面白いだろうと思いながら、なかなかそういうことは無差別には書けない。だから、どうしても実際にPublishされたことか、学会発表のあったこと以外は書けずにいた。

それから、研究する上での性格と精神性については面白いけれど、もっと実際に研究をしようと考えてる人に役に立つことを書きたい。

日本で意識の話をすると、たいてい茂木さんの話になる。皆、複雑な気分でいるというのが伝わってくる。自分としては、茂木さんは日本での意識研究の入り口になっていると思う。そういう意味での貢献は大きい。世界的に見て、クオリアということばをしっている国民はそんなにない。

実は、このブログを始めた動機は、意識に興味をもった日本の人に、どういう研究方法があるのかを提示して、培われた興味を実際の研究につなげたいという野心というか、責任感があった。だから、海外のラボに留学したいと考えている人などの自分の知っている範囲で、アドバイスができたらという希望が自分のモチベーションだと思う。

今回は、今まで書こうと思っていた"I am a strange loop"という本について書こうと思う。

I Am a Strange Loop I Am a Strange Loop

著者:Douglas Hofstadter
販売元:Basic Books
Amazon.co.jpで詳細を確認する


この本からうけるインスピレーションは強烈なものがある。ゲーデルの話と、情報の表象という観点は意識研究の上で、だいじな要素があるのはまちがえない。

意外と、他の国に比べて,日本はゲーデルの話が一般に受け入れられている感がある。それから、情報のフィードバックというのが、意識と関係がありそうだというのは多くのひとが感じていることだと思う。残念なのは、I am a strange loopは、本の半分以上は期待をもたせておいて、最終的な答えを出していない。このことは、彼の過去の仕事についていつもさけられない批判だと思う。所詮、エッセイにすぎないという評価は世界共通なようだ。

日本語に訳されているのかどうかは、知らないけれど、一般の興味をそそるところがある。でも、最終的には自己意識というのは海馬のepisodic memoryだという結論で、神経科学者には安易に思えてしまうようだ。

内心、茂木さんにはDouglas Hostadterのように世界的知識人になってほしいと願っているけれど、それは彼にとっても課題なんだと思う。

日本のサルの電気生理はまちがえなく、世界トップレベルだと思う。そのレベルに、他の分野が追いつくと、間違えなく日本の意識研究の評価はぐっとあがるというのは想像がつく。

9月から、UCLで研究をすることになるけれど、もし半年とか数年の単位で留学を考えている人には、すむところぐらいはサポートしたいから、もしそういう意図があったら、直接コンタクトをとってほしい。調べればわかることだけど、メールアドレスは、kanair@gmail.comだから、なんでも気になることがあったら、気楽にメールを下さい。

前にも書いたことがあるけれど、ASSCという意識の学会が、日本で2011年あたりに回ってくる。そのときに、日本の意識研究は立派なものだという印象を残したい。ハーバードにいたときの、ルームメイトはPatrick WilkenというASSCの創始者で、今はNeuronとTICSのEditorをやっている人で、彼はアジア地域をASSCに巻き込むことに積極的だったら、その機会を生かしたい。

9月にロンドンに住み始めて、自分の環境がととのったら、また本格的にこのブログを書こうと思う。だから、あと2、3週間はあまりたいした更新ができないかもしれない。

ロンドンにいくことで、気づいたことは、イギリスはヨーロッパとは異なる文化がある。もしかしたら、日本と大陸ヨーロッパの中間ぐらいの文化かもしれない。今でも、痛感することは、長年オランダで住み続けたことで、意外と知られていないヨーロッパの文化が理解できるようになった。もし、ドイツ、オランダ、北欧に留学したいという人には、的確なアドバイスができると思う。少しでも、気になった人には個人的に話がしたいと思う。

今回は、このブログの目的のマニフェストみたいになってしまったけど、徐々に自分のしっていることを書こうと思う。ただ、他人に迷惑をかけないという範囲にならざるを得ない。これから書くブログで、気になったことがあれば、どんどん率直な疑問には答えていこうと思う。これからは、しばらく論文紹介がメインになると思う。ある意味、論文なんて自分で読んで自分との関係を築いていくものではある。そこで、自分の意見を交えて、書いていこうと思う。「それは違うんじゃないの」という意見にもオープンでいくので、コメントはウェルカムです。いちおう変な広告と言うかブログ独特のスパムがくるので、コメントは一応承認制にしています。もし正統な書き込みがあれば、すぐにオープンにするつもりなので、どんどん好きなことを書いてください。

今は、久しぶりに日本にきて、文化の違いを感じている。日本人の気をつかう文化というのは、自分にとってカルチャーショックだけれど、飲んだときとか本音トークになるところが面白い。

また、本格的に書き始めるのと、さらにもうすこし突っ込んだことも書こうと思う。日本語のメディアで英語圏の情報をながしてしまうのは卑怯かもしれない。その辺の調節が難しいところになりそうだ。

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「学会・シンポジウム」カテゴリの記事

コメント

金井さん、昨日はすごくいい議論ができました。終電逃してしまったけど、議論できてよかったです。はやく遠隔ウェブツールを立ち上げて議論を進めたいですね。ゆくゆくは論文が書けたらいいなー、なんて。

昨日の結論としては、Libetの実験に報酬を組み込むや、Libetの実験に感覚フィードバックを入れるという感じでしょうか。他、もっとたくさん議論した気がしますが、思い出したらまた書きます。

投稿: 野澤真一 | 2007年8月29日 (水) 16時43分

”ハーバードのラボはPatrick Cavanaghがパリに行ってしまうということで、その直前にVisionLabの雰囲気を味わいたいというのと、自分がどこまでPsychophysicsができるかという挑戦をしようと必死でした。”

自分がどこまでpsychophysicsができるかとかPAtrickがいなくなるまえのVision Labの雰囲気とか、きみのやる気は大変評価するし、この分野で実際最も有能な若手日本人研究者であると信じるが、一番大事なことは、どんな研究課題が頭に引っかかっていて、それをどのように解明するかに必死になることですね.研究は自己実現の手段でも、他者がどういう風に研究しているかを意識することでではなく、ただ楽しいから必死にやってほしいです.そうすると研究もより深みに入る(はまる)かもね。

投稿: タケオ | 2007年8月31日 (金) 07時08分

野澤さん

この前のディスカッションは、お互いの興味がわかって楽しかったです。

野澤さんは、完全にフリーな自由意志の状況を目指しているようですが、そこにパターンを見いだすことで、完全に自由だと思える状況にも無意識の決定過程があるということを示そうとしているのだと思います。

僕は、完全なフリーな状態をつくることが難しいと思っているので、むしろ、implicitにリワードによって動機をあたえて、本人的には自由に選んでいるつもりでも、刺激のマニピュレーションによってパターンが形成されているとこを示す方が確実だろうと思いました。そうすることで、一見自由意志に基づく行動にたどり着く因果関係をみることができたら良いと思います。

時間知覚に関係あるEEGの過去の研究は、あまり知られていませんが、readiness potential乗のものがフロンタルででているので、そっちの論文もまとめて送ります。

投稿: 金井 | 2007年8月31日 (金) 10時06分

タケオさん

コメントありがとうございます。自分でも研究の周辺のことに気をとられすぎだなと感じることが多々あります。

はっきりいわれて気づくのですが、今までの自分のやり方が、自分の快楽ではなくなってきていると内心感じています。

楽しいから必死にやることが、研究に深みを与えるというアドバイスに、勇気がわきました。

投稿: 金井 | 2007年8月31日 (金) 10時36分

こんなことを書くのは、私が年を取って来た証拠で、若いときは暗中模索だったんで、自分が本当に楽しんでやれたかどうかわからないですね.老人は自分の失敗からものを言うけれど、あたかも自分はその逆の失敗のない道を歩んで来たかのごとくいうことが多いのです。。確かに言えることは、他者を気にしすぎると、だんだん研究がつまらなくなってくることと、小さくまとまってしまって、自分独自の研究がしにくくなることかな。流行を追う時点で、自分は流行遅れであるということは大事な事実なのかも.君が流行を追っているという意味ではないけれど、流行の話は他者を気にしすぎる例としてあげました.もう一つ確かなことは、私は金井君の活躍を大いに期待しているということです。.

投稿: タケオ | 2007年9月 2日 (日) 12時10分

他人と比べてどうなのかって、正直非常に気になりますよ。

私は来年、再来年あたりに job application をしないと、と考えているから、そうなると インパクトのある面白い論文を書かなければ、というプレッシャーがあります。

同世代の同じフィールドのやつらがこれからポツポツ職をとりはじめると余計プレッシャーが強くなるだろうなと思うし。私は元々他人との勝ち負けがmotivationで生きてるような人間なので、特にその傾向は強いことになるだろうと思います。 金井の論文も気になるし。

楽しいことを追究しないと研究もダメになると言うのには完全に賛成です。最近頼まれてやってる実験の分析なんかは、自分が楽しんでやってることじゃないので、こんなんばっかやってたら、ホントにブルーになると思ってます。ただ、こういう委託研究みたいなので、新しいことを学んでいるという感触は強いです。(それも大事なことだとはおもいますが)

流行に関してはどうなんでしょう? 特にneuroscienceは技術、理論の発展とできる実験の発達のcorrelationが高いから、面白いことや新しいことをしようとすると、どうしても新しい技術(〜流行?)に行きがちですよね。私はdecoding/multivariate analysisを最近やってますが、流行を追ってるからダメだな、とは思いません。むしろ、新しい知見を得るのに非常に役に立ってると思います。

まあ、タケオさんが言いたいのは、自分の芯にある興味を見失わずにがつがついけってことでしょう。

(これ、下條さんとかもみてんのかな?)

投稿: 土谷 | 2007年9月 4日 (火) 02時47分

ASSCについて

来年の6月に台湾で行なわれるASSC12の企画厚生を、今、私が所属しているラボの長である、Ralph Adolplhs ラルフ エイドルフスが中心になって関わっています。

そこで、9/15 までに、keynote speakers を決めなければならないらしいのですが、ここのブログを見ている人で、誰か推薦したい人いますか?

私は 松沢哲郎さんがいいんじゃないかと思っています。他の日本人の研究者で哲学・科学問わず、なにか意識の研究で重要な仕事をしていて、かつ、約一時間、面白いトークをできる人を探しています。

ちなみに、今のところ哲学者のなかでは、

Searl, Chalmers, Metzinger, Collin McGinn, Thomas Nagel などが候補に上がっているらしい(内部情報)

台湾ということなので、アメリカ西海岸、オーストラリア、アジアあたりがよさそうだということですが、それ以外でもASSCでトークを聞いてみたい人がいれば教えてください。

投稿: 土谷 | 2007年9月 4日 (火) 03時19分

結果として流行を追ってしまうのはほとんど全ての人の傾向で悪いことではないと思うけど、流行を追おうとして研究すると、自分の信念で研究ができなくなるということかな。土屋君の解釈で合っていると思います.流行をつくる研究は、その前には人に顧みられなかったものが圧倒的に多いということを忘れずにやれば流行をつくる研究ができるんじゃないかな.

投稿: タケオ | 2007年9月 4日 (火) 10時00分

 はじめまして、桑原と申します。いつも興味深くこのページを拝見させて頂いています。
 
 僕は、去年度まで分子脳をやっていたのですが、金井さんの訳された「意識の探究」に触発されたこともあり、今年度からサルを用いたワーキングメモリーに関する研究に分野を変えました。文中に、意識に興味を持った日本の人に…、とありますが、少なくとも僕はそういった意味ではお世話になった一人であります。

 また、これからもいろいろと御教授いただく事もあるかと思いますが、よろしくおねがいします。

投稿: 桑原 | 2007年9月 6日 (木) 16時52分

桑原さん

コメントありがとうございます。分子からサルのワーキングメモリーとは、かなりの大転向ですね。

脳に興味があって、気がつくとニューロンの分子生物学をやっていたという人はけっこういるんじゃないでしょうか。

僕も京大の学部のときは、まわりには脳に興味をもっているひとはたくさんいたけど、細胞からは自分の興味のある脳とギャップがあるなと感じていました。そういう意味では、脳全般について広く学べる脳学部みたいなのがあればよかったのにとよく思います。

研究の話、是非聞かせてください。

金井


投稿: 金井 | 2007年9月12日 (水) 18時55分

ASSC12 (台湾)について

どうやら、松沢哲郎さんと、川人光男さんに invited speakers を受けてもらったみたいです。

金井と吉田さん、
恐らく、2008年1月ごろに、abstract と workshop の募集がかかると思うので、その時はまたブログを使って紹介してもらえますか?

投稿: 土谷 | 2007年9月18日 (火) 18時01分

吉田です。いま見つけました。(SFNの会場で、Buzsakiの本が買いたくなって金井さんのレビューがあったのを思い出して見てたら、このコメントに気がつきました。)。
もうASSC12のサイトでabstractの募集が始まってますね。締め切りは2月。去年より早いですね。
台北でも演題を出す予定です。ブログでもそのうちとりあげると思います。ではまた。

投稿: pooneil | 2007年11月 7日 (水) 07時24分

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