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クリック賞

そういえば先週、UCLのGeraint ReesというfMRIで意識の研究をしている人がFrancis Crick Prizeというのを受賞した。そのときにRoyal SocietyでLectureしているのを見に行った。

映像も見れる
http://royalsociety.tv/dpx_live/dpx.php?dpxuser=dpx_v12

クリック賞というのがあることも知らなかったけど。意識の研究は、ノーベル賞はむりでも、クリック賞なら目指せるのかもとか思ってしまった。イギリス人以外でもとれるのか?

Geraint Reesはいつもながら講演がうまいというかおもしろいなぁ。

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Prefrontalのtemplate

すこし前の論文だけど、最近読んで自分にとってインパクトがあった論文がある。

Predictive codes for forthcoming perception in the prefrontal cortex by Summerfield et al. 2006 in Science

Medial prefrontal cortexに顔に反応する部位があるのだけど、この実験では写真をdegradeして何の写真だかわかりにくくした上で、画面上の写真が顔かどうかを判断するタスクをしているときにこの部位が活動を示すということが示された。FFAなどのように顔に反応する部位がprefrontalにもあるというのではなくて、prefrontalのこのエリアはトップダウンで顔をテンプレートマッチングしているのだと結論づけている。実験のデザインがエレガントなのも印象的だが、supplementalではleft lateral prefrontal cortexには同じように家のtemplate matchingをしている場所があることも示していた。

この論文の例のように、刺激選択性のある高次視覚野のような反応をみせるprefrontalのエリアが、タスク時にテンプレートとして機能しているという考えを、今までなんだろうと不思議だったprefrontalの反応に当てはめてみると考えさせられる(たとえば、このmotion direction selectiveなprefrontalのneuronと、Kaksas & Pasternak 2006)。

それから、もう1つ。
Unconscious activation of the cognitive control system in the human prefrontal cortex Lou & Passingham 2007

どういう実験かというと、タスクは呈示された文字に対して、phonological judgmentかsemantic judgmentをすることで、、どっちのタスクをするかは□か♢のどちらが呈示文字の前に呈示されたかで決まる。そのタスクを決めるシンボルがでる直前に□か♢が意識にのぼらないように呈示されていて、そのことによってタスクに対するプライミングがおきる。この実験パラダイムの面白いところは、プライムが見えてないときにしか、タスクに対するプライミングが起きないというところだ。

それで、fMRIでこのタスクに対するプライミングがどこで起きているかというのを調べた。phonologicalなタスクに関わる場所としてleft ventral premotor、semanticなタスクに関わる場所としては、left inferior prefrontalとleft temporal gyrusを選んで、それぞれの場所でプライムとタスクがcongruentだった場合とincongruentだった場合を、プライムがvisibleな場合とinvisibleな場合で比べている。そうすると、behaviorどうりプライムがinvisibleなときだけ、congruencyの効果がそれぞれの場所で見えるという話だ。

よく読むと、いいとこだけとってなんか微妙だなと感じさせるところはあるものの、見えない刺激がどこまで高次機能に影響を及ぼすことができるのかという文脈では面白い研究だ。Crick&Kochの昔の仮説だと、prefrontalに直接投射していることがNCCの条件だというのがあったが、prefrontalをactivateするだけでは意識にのぼらないという例としてHakwanの研究は意義があるだろう。タイトルの付け方からも、その辺をウリにしているようにも見える。でも、Kochの本では、一定時間持続的に活動することがNCCの条件だといっているから、プライミングのような一時的な活動の増加は、必ずしもprefrontalが重要でないという反例にはならないだろう。


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UCLの印象

ロンドンに引っ越して来てから1ヶ月以上経った。

今はUCL(University College London)という大学のVincent Walshのラボで、今後の実験の計画を立てたり、少しずつアイデアを試しながら、おもしろいことに出くわすのを待っている。例えていうならば、ちょっと釣りみたいな感じかもしれない。

周りの人は、けっこう変わったテーマの研究をしている人が多い。Synaesthesia(日本語で、「共感覚」と訳されている。文字に色がついて見えたり、感覚が混ざっている人)とか、numerosity(数字の大きさとか、数が多いか少ないかの認知)とか、催眠術とか、さらには寝ている人の脳を電気で刺激したらどうかとか、面白そうだけど、なかなか研究するのが大変そうなテーマを扱っているひとが多い。というか最初に来たときの印象では、全員がnumerosityかsynaesthesiaだった。

今まで、ずっと主に視覚をやるラボにばかりいたから、最初はモニターのボロさに驚いたけど、そのかわりTMSが強みのラボというだけあって、あらゆる実験セットアップにTMSという脳を電磁誘導で刺激する機械がついている。しかも、theta burst stimulationという強力な効果のある刺激方法(Huang et al. 2005 )を普通に使っている。

ロンドンに来る前に、いまのUCLのボスにいわれたことで、「ロンドンは、神経科学者の数がクリティカル・マスを越えてるからすごいんだ」といわれたとこをよく思い出す。今いるところはICN(Institute of Cognitive Neuroscience)というところだけど、同じ建物にはGatsbyがあり、となりはFILでpsychologyにいけばAlan Johnstonもいるし、computer scienceでもvision関係のひとがいる。City Universityというのもあって、journal clubとか合同でやったりする。なんというか、街中に研究テーマ的に近い人がたくさんいるうえに、交流が濃い。それから、Birkbeck Collegeというのもあって、今自分がいるラボでの、EEG/TMSの実験とかfMRIはBirkbeckでやることが多い。この一ヶ月の間は、平均1日5人ぐらい新しいひとに会い続けていた。会ったからどうだってことではないけど、とくにTMSのノウハウを伝授してもらっているのがありがたい。

カルテクにいたときは、Brainsightという機械をつかって、特定のエリアをターゲットするのに、まずfMRIやって、それからTMSでねらって、そしてちゃんと眼球運動が始まるまでの時間が遅くなってるから、FEFにあたっているだろうとか確信を持つまでに時間がかかっていて、一番知りたい問題を解決するというところ以外での格闘に時間がかかっていた。UCLで感じるのは、そういうステップを既に踏んで複数の方法を比べた経験のある人などが、そういう技術的に気になるところをすでに解決した経験があるから、自分でやって気になっていたとことがすっきりわかって、実験もすすむ。実験をしようとする時に発生する微妙な問題の解決法というのを経験者はもっている。そういう経験の蓄積の層の厚さに毎日感動させられる。



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