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睡眠について最近読んだ本

前のエントリーにも書いたけど、この前の12月に睡眠のワークショップがあった。

そこで話した人の一人でJim Horneという人がいた。

その人に、自分が眠りにつくときに金縛りにあったりするという話をした。そしてら、それは遺伝性だということがわかっていて、ナルコレプシー(急に眠ってしまう症状)とも関係があるといわれた。さらに、その場合は自分がルシッドドリーム(明晰夢、夢の中で自分は夢を見ていると気づくこと)ができると思っているのは、おそらくルシッドドリームではなくて眠りにつくときに見える幻覚(hypnagogic hallucination)であるだろうといわれた。600人に一人ぐらいはこういう傾向があるらしい。

なんていうか、自分がなんとなく知っていても詳しくは知らないことが多い睡眠について、一方的にいろいろな事実を教えてくれた。

それで、その人に勧められて、この人が一般向けに書いたという睡眠の本を読んでみた。


Sleepfaring: A Journey Through The Science of Sleep Sleepfaring: A Journey Through The Science of Sleep

著者:Jim Horne
販売元:Oxford University Press
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いつも睡眠に関する本を読むたびに思うことだが、すごく基礎的な睡眠に関する事実について自分が知らなすぎることを痛感させられる。特にこの本は、トリビアみたいな「へ〜」っと思わされる事実がたくさん書かれていた。いまのラボのボスのWalshと今日話していたら、この本には二文ごとに気になる事実が書いてあるといっていた。たしかにそのくらいいろいろな事実が書いてある。読んだらすごく睡眠について物知りになった気分になる。

まあ、特に印象深かったのをすこし紹介します。

  • 連続で眠らずに起き続けた世界記録は現時点では264時間だ。ランディ・ガードナーという当時17歳の少年が出した記録で未だに破られていない。 自分がこれまでに連続して起きていた時間の最長が100時間ぐらいだから、その倍以上起きていたというのはとても想像ができない。
  • 鳥(カモ)は片目ずつ瞑って眠る。そして、閉じている目の反対側の脳は眠っていて、目が開いている方の反対側の脳は目を覚ましている。イルカでの話は有名だが、鳥もそう名だったとは知らなかった。
  • イルカにはレム睡眠がない。イルカは脳の半分が片方ずつ眠るが、レム睡眠で夢を見てしまうと、混乱するからではないかと筆者は書いていた。
  • 冬眠は睡眠とは違うらしい。特に驚いたのが、冬眠中の動物は睡眠不足になるらしい。だから、冬眠中に睡眠を取るために一時的に体温を上げることがある。こういう基本的事実もそれほど広く知られてはいないだろう。
  • 睡眠不足だと、話をするときに適切な言葉が出てこなくなる。話す内容も単純な受け答えしかできなくなってしまうから、人と会うときに眠いというのはかなり問題だ。

こんな感じのことがいたるところに書いてある。だからけっこう楽しく読める。

Jim Horneのトークのときにいっていた気になることで、「レム睡眠というのはスクリーンセイバーみたいなもので、寝ているというよりは覚醒した状態の特別な何もしていない状態だと考えるべきだ」という主張があった。自分としては夢とかレム睡眠というのはミステリアスで研究テーマとして面白そうだと考えていただけに、なんとなく興ざめな主張であったけれど、その真意が知りたくてこの本を読んだ。

結局どういうことかというと、レム睡眠はなくなっても困らないということだった。抗鬱剤を飲むと、レム睡眠が阻害されて何週間もレム睡眠がない状態が続くことがある。それでも、抗鬱剤をやめてレム睡眠が復活しても、レム睡眠の量が反動で増える訳でもないし、記憶や学習もレム睡眠なしでできる。一応レム睡眠は手続き的記憶をあげる効果があるという実験データもあるが、それも単に無意識のうちの覚醒時のメンタルトレーニングみたいなもので絶対に必要というものでもないだろうと反論している。

ただ、なんで睡眠中にレム睡眠に入るのかということについては、ぱっとした説明がない。脳がずっと寝ていると飽きて刺激が欲しくなるからだという主張だが、あまり説得力を感じなかった。それから、ほ乳類で胎児もレム睡眠がたっぷりあるらしいのだけど、胎児が動かないようにするためとか、いろいろな事実をあげているが、それほどすっきりした気はしない。それでも、レム睡眠の確たる機能が未だに理解されていないというのは事実のようだ。

それからもう一つ睡眠について一般的に書かれた本で面白かったもの。


Counting Sheep: The Science and Pleasures of Sleep and Dreams Book Counting Sheep: The Science and Pleasures of Sleep and Dreams

著者:Paul Martin
販売元:St Martins Pr
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Jim Horneの本と内容的に重なるところも多いが、より社会的なコンテクストで睡眠について書かれている。例えば、いかに現代人が睡眠不足で、それが事故とつながるかなどが議論されている。睡眠が足りないと、人は判断力を失い、性格も不安定になるから怒りっぽくなり、社会的能力も低下する。そんな状況で仕事をしてもあまり働く方にも雇用者にとってもいいことはない。むしろ、ミスが増え他人に危険が及ぶことさえある。チェルノブイリも睡眠不足による判断ミスが事故の原因になっている。

もっと身近な例では車の運転。飲酒運転は法律で禁止されているが、睡眠不足運転も同じぐらい危険であるにも関わらず法律で禁止にしようという風潮はない。アルコールと違って、簡単に睡眠不足度を計測することができないのと、実際に眠いときに仕事をさせないルールを作ることも難しいだろうから、簡単には睡眠不足運転を禁止することは現実的ではない。

また、中年太りというのも男の場合は睡眠不足と関係がありそうだ。というのは、寝ているときに分泌される成長ホルモンによって体内の脂肪が分解されている。実は睡眠中に成長ホルモンが分泌されるのは人間に特有の現象で、人間の食生活のパターンと関係があると考えられている。ネズミなんかは目を覚まして少し食べたりするし、草食動物は睡眠中も消化を続けている。肉食動物も、消化に24時間かかるから、睡眠中に栄養不足になることはない。その点、人間の場合は睡眠時間には消化が終わっているから、その間の栄養は脂肪を分解して確保している。ということは、毎日よく眠ることでダイエットになる可能性がある。もちろん、何日も眠らなければ体重が減るというデータもあるが、それはどちらかというと死に近づく不健康なダイエットだろう。

しかし、今後睡眠の重要さが一般に理解されるようになるにつれて議論も起きるべきだろう。最近の嫌煙運動のようなものも、おそらく30年前には想像もつかなかっただろうから、同じように今から30年後には、睡眠時間を削って仕事をさせることが倫理的に認められなくなるようなことがあるかもしれない。

特に睡眠についての基礎的な事実が一般的に理解されるようになれば、事故を減らしたり、楽しい気分で快適に仕事をして生産性を上げるようなことも計画的にできるようになるかもしれない。少なくとも、寝ないでがんばるという古典的な方法よりも、寝ることで良い結果がでる場合もあるだろう。受験生が勉強するときとかも、寝ないでがんばるよりも、記憶に残る時間帯に勉強してからたっぷり眠った方が、覚えられるかもしれない。さらに、そのうち書こうと思っているが、まえにかいたWalkerの別の実験で、睡眠には記憶の定着化だけではなくて、知識をオーガナイズしてより深い理解へと導く役割もあるということがわかっている。さらに社交能力も睡眠でアップするから、正しい寝方をした方が得することは多そうだ。

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