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社交性のある脳

ここしばらく学会などで旅をしていた。
フロリダのVSS以来、途中ロンドンには立ち寄って洗濯する程度で、ベルリンのASSCへもいき、そして日本の生理研での研究会にも参加した。

その間にたくさんの脳科学や意識についての講演を聴き、自分でも計6回ほど人前でふがいない発表をしたりした。毎日たくさんの人と会い、いろんなテーマについて話し合った日々が1月ほど続いたわけだ。それだけ、そうとう気になる話が頭の中に溜まっていてこのブログにも書きたいことがいろいろある。

それもまた身の回りの整理ができたら書くとして今日は一般的に面白そうな論文紹介をしようと思う。

その論文がこれ。

The Brain Structural Disposition to Social Interaction by Lebreton et al. (2009) in Eur J Neurosci.

「脳の構造の違いで個人がどれだけ社交的かがわかるか?」というのを調べた研究。MRIでみたgray matterの量と社会的交流をどのくらいリワードとして感じているかの相関を見ると、orbitofrontalとかventral striatumのgray matter densityが高い人ほどフレンドリーだったという話。social reward dependenceというのを、Cloninger's TCIというアンケートで求めていて、その人たちのMRI画像と相関を取ったVBM(voxel-based morphometry)の研究。この研究のすごさをおおざっぱに言ってしまうと、脳をみただけである程度その人がフレンドリーな人かわかってしまうということだ。こういう研究はこれから社会に大きな影響を与えていくと思う。

ただ、問題はこういう研究では因果関係がさっぱりわからない。生まれつきリワードと関係した部位が発達する遺伝子をもっていたから社交的な人間性になったのか、社交的な人間性だったからリワードと関係した部位が発達したのか。おそらくそういう場面で脳刺激は因果関係を確立するために活躍するだろう。

ただ、まえから気になっていたのが、tDCSではよくレファレンスを刺激部位と反対の眉毛の上あたりにつけることがある。それだとorbitofrontalを刺激してしまうからあまりやらないようにしているが、実験の種類でBA10を刺激する実験をしていたときに気になったことがあった。どうも実験中とか休憩中に被験者がよくしゃべるようになる。社交性があがるかどうかの実験ではなくてワーキングメモリの実験だったから、じっさいによくしゃべるようになったのか計測していないが、もしかしたら本当に効果があったのかもしれない。あくまでも主観的印象だが。

いま自分でもVBM風のこと(cortical thicknessとDTIも含む)をやっていて、本当に因果関係があるのかわからないようなとんでもないものでも相関を見ることができてしまう。因果関係までみるためには相関のあった部位に脳刺激を与えて機能が実際に変化するところまで確認する必要がある。

いってみれば手相占いのようなものだけど、実際に統計にかけてチャンスより高い確立であたっていることを示す必要がある。そして、因果関係を確立するというのは、手相を書き換えたら本当に寿命が延びるかということをテストすることにあたる。

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