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孤独の科学

今回は、社会と脳科学が交錯する「孤独の脳科学」についてお薦めの本を紹介しようと思う。ジョン・カシオポの「孤独の科学」という本で、最近の孤独感研究を非常にうまくまとめている。

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか 孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか

著者:ウィリアム・パトリック,ジョン・T・カシオポ
販売元:河出書房新社
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Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection

著者:John T. Cacioppo,William Patrick
販売元:W W Norton & Co Inc
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英語版の方のみを読んだので、日本語訳がどれほど読みやすいものかはわからないが、内容的には専門知識なしで楽しめる内容だ。おそらく脳科学や人類学の基礎知識がある人には後半はかなり一般的な話が続くので途中から少し飽きてしまうかもしれないが、最初の三章あたりまでは、かなり驚きの孤独研究の話が載っている。

「孤独」というのはあくまで個人的な問題で、科学が扱う程のテーマでないように思われるかもしれないが、社会的な生物である人間にとって重要な感情のであるのは間違えない。孤独という感情に動かされて、人間は他人との接点を持とうとする。

孤独の研究は幸福の研究とも良く似ている。カシオポの孤独の本を読んでいたら、以前に読んだダニエル・ギルバートの幸福論と非常に似ていた。

幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学 Book 幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学

著者:ダニエル ギルバート
販売元:早川書房
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何が似ているかというと、「孤独」も「幸福」もどちらも主観的感覚であって、「お金」や「友達の数」のような客観的に定量可能な数値でかならずしも測ることができないということだ。

この主観性は非常に意識の研究と似ている。意識の研究でもかつて問題であったことは、被験者の主観的な報告を、科学はまともに相手にするべきではないのではないかという、行動主義的な疑念があった。しかし、お金や友達の数で孤独や幸福を定量化できないのであれば、本人がどう感じているか聞いてみなければ、主観的な感覚というものを捉えることは難しい。当然、脳科学は、そのような主観的な報告と対応する物質的基盤との関係性を保つことで、単に内省的な報告を記述するだけの、心理学から一歩抜け出し、主観性の問題を、客観的に観測できる現象として捉えようとする。

社会性の脳科学と意識の研究との間に接点があるのは、主観性をいかに科学として扱うかということだろう。主観的な感覚の研究という観点から、孤独の研究は面白いが、睡眠などの研究とも同じで、今まで自分の知らなかった基礎的事実もまた興味深い。たとえば、孤独は50%遺伝子で決定しているとか、孤独はソーシャルネットワークを介して他者に伝染するなど、おもしろい事実がたくさんある。また、孤独を感じていると、テストなどができなくなったりするし、おそらく肥満になる確率もあがる。

カシオポのTICSのレヴューも、最近の孤独研究を概観するのにお薦め。

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