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名前の不思議な心理効果

ロンドンで実験をしていると、いろんな人がいるから実験に来た人の名前が気になるようになった。そして、初めてくる被験者が遅れてくるかどうかとかも、名前を見ただけで予想できるような気がする。それが正しいかどうかはともかく、名前にはその人の生活に影響を及ぼすだけの意味があるようだ。

前に紹介したロビン・ダンバーの本(How Many Friends Does One Person Need?) では、スコットランド人がスコットランド風の名字の人に親切にする傾向があることや、変わった名前の人は、自分と同じ名前の人からメールが来ると返信しがちであるなどの話がでていた。それから、少し前に流行ったFreakonomics (邦題はヤバい経済学)という本では、名前をみればかなりその人の家庭の社会的階級のようなものがわかるということが書いてある。

これは名前の持つ社会的な効果だけれど、名前には個人の無意識に心理的な効果も与えているようだ。その論文のアブストラクトがこれ

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Psychol Sci. 2007 Dec;18(12):1106-12.

Moniker maladies: when names sabotage success.

Nelson LD, Simmons JP.

Abstract

In five studies, we found that people like their names enough to unconsciously pursue consciously avoided outcomes that resemble their names. Baseball players avoid strikeouts, but players whose names begin with the strikeout-signifying letter K strike out more than others (Study 1). All students want As, but students whose names begin with letters associated with poorer performance (C and D) achieve lower grade point averages (GPAs) than do students whose names begin with A and B (Study 2), especially if they like their initials (Study 3). Because lower GPAs lead to lesser graduate schools, students whose names begin with the letters C and D attend lower-ranked law schools than students whose names begin with A and B (Study 4). Finally, in an experimental study, we manipulated congruence between participants' initials and the labels of prizes and found that participants solve fewer anagrams when a consolation prize shares their first initial than when it does not (Study 5). These findings provide striking evidence that unconsciously desiring negative name-resembling performance outcomes can insidiously undermine the more conscious pursuit of positive outcomes.

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この研究の内容を簡単に要約すると、自分の名前イニシャルが好きな人は、自分の名前のイニシャル(AliceだったらA、ChrisだったらC)に影響をうけて、成績に違いがでるらしい。特に、CとかDとかは悪い成績を表すイニシャルだから、中立的なMとかがイニシャルの人に比べて、統計的に成績の悪い人が多いらしい。自分のイニシャルと同じ悪い成績を無意識のうちに受け入れているようなのだ。

これは英語圏の話だから、日本の名前だとどうなのかわからないが、漢字の名前にはより直接的な意味があるから、日本語だったらもっと自分の名前に影響を受ける人が多いのではないだろうか。ただ、単にイニシャルの26文字に分類したりすることができないから、調査するのが難しいかもしれないが、同じような心理的効果はきっと働いているだろう。

当然、名前の付け方だけで子供の将来のすべてが決まる訳ではないが、親が子供に将来どういう人になって欲しいと願いを込めて名前をつけるのは、案外的外れなことではなさそうだ。

自分の名前は「良太」だけど、自分は「良」くなるように無意識に思っているのだろうか。いつもシンプルな名前だなあと思う。絶対に小学校の先生が読めない最近の子供たちの名前には、またなんらかの心理的影響力があるのだろうか。

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コメント

10年以上前、何気なく中学受験塾の成績優秀者の名前(小学6年生)を見ていたら、見たこともないような珍しい名前(漢字と読み方)が上位の方にちらほら並んでいました。一方、とても多いと言われている名前がほとんど見当たりませんでした。
全体の名前の分布から考えると、不自然な分布ではないかと感じました。
珍しい名前⇒由緒正しい家柄⇒優秀かも、という図式によるピグマリオン効果かな。
珍しい名前のため、目立っていて、憶えられやすく、指名されやすい。
等といろいろ想像しました。
小学生の場合は、珍しい名前、あるいはその地方に稀な名前と成績に関係があるかもしれません。(目をつけられやすいために悪くなる可能性もあるかもしれませんね)
私自身、珍しい名前とありきたりな名前を経験しましたが、あいた口がふさがらないほど、名前を聞いた人の私自身に対する関心の持ち方が、全く違うと感じました。

投稿: masami | 2010年12月27日 (月) 19時20分

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