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Subjective Discriminability of Invisibility

久しぶりに論文がでた。自分ではものすごく重要だと思う内容だけど、ずいぶんいろんな雑誌に落とされて、最終的にはConsciousness & Cognitionというとこでin pressの状態になった。

これがその論文。
Kanai_ConsCogn_SDI.pdf.zipをダウンロード

どういう話かというと、意識の研究をする時に、網膜に刺激が映っていても、意識に上らないような状況を引き起こす方法がいろいろあるけれど、その「みえない」という状況には種類があるのではないかということを信号検出理論のタイプ2課題を改良したSDIという指標で示した。

刺激が見えないときに、それが主観的に刺激が存在しないのと区別がつかない状態なのか、それとも自分で(注意していなかったからなどの理由で)見えなかったことに気づいているかで、主観的に「みえない」状態が区別できる。これは、p-consciousnessがない状態とa-consciousnessがない状態に対応しているのではないかと考えているが、そこまではトークでは言えても、論文では書けなかった。

たぶん、秋にASCONEで講義をするときには、この研究の話とその続きの研究について話そうと思う。けっこうややこしい話でもあるから、詳しい内容に興味があるひとは元の論文を見てください。

今のところ、自分の興味はタイプ2課題に収束してきている。この前、日本で出した本(個性のわかる脳科学)で社会性の脳科学のような内容について書いた。あの本を書いたことは、自分の中の興味を整理するのに役に立った。社会性と意識はまったく無関係の研究テーマのようだけれど、タイプ2課題というかメタ認知的な部分では共通点が多い。この辺のことも、実際に論文が出始めてくれると、公表できるようになるだろう。

脳の部位的には、Precuneusが非常に気になる。Cavanna & Timble (2006) のprecuneusのレヴューを見ると、この部位が「自己と他」や「共感」などの社会的な能力に関わる一方で、意識にも重要であることがわかる。このレヴューだけみると、何をやっているかよくわからない脳部位だという印象かもしれないが、自分のなかで「社会性」と「意識」に共通項が見つけられた気がする。総合的に見るとPrecuneusは「内省」のような機能を果たしているように思える。この部位がもつメタ認知的に自己の知覚内容や認知能力を捉えるという機能は、タイプ2課題で測られるアウェアネスで、意識にも社会的コミュニケーションの両方の基盤となっているのではないか。

もしサルでPrecuneusを取り除いたら、V1があっても知覚のメタ認知ができないというblindsightと同じ状況になるんじゃないだろうか。

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