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ソーシャルメディア時代の新しい知性

ネットによって、あらゆるスピードがあがりすぎて、常に忙しい環境にいるのは自分だけではないはずだ。

ここ5年ぐらいの間に、ネット経由での情報が多すぎて、これに対応して仕事の効率やアイデアの創成にどう役立てていくかというのは、個人的なテーマでもあるし、脳科学としても面白いテーマだと感じていた。

それで新しいタイプの天才が生まれるだろうとか、情報過多がイノベーションを引き起こすきっかけになるのではないかとか考えてきた。

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それでも、最近の風潮は今のソーシャルメディアによってもたらされる情報量は、脳に良くないのではないかと言う人が増えてきている。そういう主張をしているのは、特にNicholas CarrとSusan Greenfieldはネット有害説の主唱者だが、自分としては少し懐疑的にこの風潮を見ている。

The Shallows: What the Internet Is Doing to Our Brains Book The Shallows: What the Internet Is Doing to Our Brains

著者:Nicholas Carr
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http://www.youtube.com/watch?v=pS_FwVI7Si4

このNicholas Carrの本は、今のネットの風潮では、じっくり文章を読むことが少なくなって、じっくり考えることができないぐらい脳に影響を与えていると主張している。でも、これは怪しいと思う。この本のレヴューでニューヨークタイムズは、ソクラテスは本が記憶力を悪くすると危惧していたという話で始まる(http://nyti.ms/9ff7vs)。この解釈はすごく納得する。新しいテクノロジーがでてくると、それが人間に与える影響について心配するというのは、人間の心理だ。しかし、むしろ我々は新しいテクノロジーとどう付き合っていくかを考えるべきで、歴史的な事実として、常に新しいテクノロジーに順応してきた。

Susan Greenfieldの意見も、似たような感じだ。(ガーディアンの記事)。

しかし、こういった意見には未だに脳科学としてデータが不十分だ。ソーシャルメディアが脳に与える影響をちゃんと調べてから、善悪の判断をしたらいい。注目には値するテーマだけれど、善悪の判断ができるほどデータがないというのが本当だろう。

それから、注意力がなくなって、気が散りやすいというのは必ずしも悪いことではない。むしろ、知識や記憶力が知性の要でなくなってくることで、人間はよりクリエイティブなことに専念できるかもしれない.

Carson et al. (2003). J. Pers. Soc. Psychol. の論文では、気が散りやすい方がクリエイティビティーが高いということを示している。ただし、IQがそもそも高くないと気が散りやすいだけで、意味がないけど、いろんな分野にまたがる知識を好奇心をもって吸収して、新しい物語を想像するというのは、科学者に限らず今後重要になってくるクオリティーだろう。人間は物語性に惹かれて価値を感じる。新しいウェブ時代のリーダーにとって、興味深い物語を創造する力は不可欠だろう。

そこで、気になるのは、今の時代子供たちに何を教えるべきかということだ。記憶をベースにした教育の重要性は減っていくかもしれない。心理学で教育は特殊な問題だと思う。学習や発達などの事実について心理学は膨大なデータを蓄積してきた。しかし、教育を考えると、何が子供のためになるのかという善悪の判断が入る。この部分は、大人たちの先見の明と、善悪という哲学の問題が入ってくる。

それから、今のネット経由の情報の収集の律速条件が、文章を読む早さになっている。読むという行為は、人間にとって比較的新しい能力だから、効率にはかなり個人差があるだろう。だからといって、速読ができればいいのかというと分からない。この面では、人間同士のコミュニケーションのスピードをテクストベースから、もっと直接的なものに移行するようなことも起きるかもしれない。少なくとも、映像の占める割合は増えている。

ちょっと今考えてるのは、来年当たりこの問題について発言している人たちを集めて、イギリスで、ネットと脳と教育っていうテーマでディスカッションをやりたい。そのためにも、まずは推測ではない、本当の脳のデータが必要だと思う。

それから、Sir Ken Ronbinsonだったら、ソーシャルメディア時代の教育について、きっと面白いことをいいそうだ。だれかインタヴューしてくれないかな。

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