Psychophysicsのネタ本

私の視覚の研究では、心理物理学(psychophysics)という手法を使っている。といって、これは手法というようなものではなくて、武器なしで戦うドラクエでいうところの武闘家みたいなものだ。しかも武闘家らしくすばやい。つまり、ものすごくプロジェクトの展開がはやい。武器なしだから、お金もかからない。頭の良さよりは、とんちみたいな部分がおおくて、小説家というよりは、詩人みたいな身軽さだ。

学会にいって、人の発表をみると、ほとんどのことが最近の論文とかから一歩進んだところにあるぐらいか、あまりに無関係で興味がわかないようなものが多い。あまりにたくさんの人が同じことに興味をもって、同じようなことをしている。

だから、競争になる。かなりの論文が、同じアイデアは思いついてたけど、そこまでやる時間がなかったから、他の人がやってしまったということが多い。新しい論文を見て、そこからちょっと発展させてやるような研究は、意義のあるものは単純に競争だし、意義のないものはやるだけ時間のむだだ。

となると、普通に研究してもおもしろくない。競争か無意味かの選択肢ではやるきもなくなるというものだ。他人が思いつかないような独創的なアイデアを持てば良い。

というのは、簡単だが、どうしたら単純競争ではない、自分独自のアイデアを持つことができるのか。そのためには、自分独自のパースペクティブ(問題意識)を持つことが大切だろう。多くのアイデアは、最新の論文から得ることもできるし、最新の論文というのも知らなければいけないけれど、それだけでは、他人との情報の相関が高くなってしまう。つまり、自分だけがもっている情報ではないから、そこからはそこまで独自のアイデアというのはでてこない。それをさけるにはどうすればいいか。

そういうときに古典を読むといいようだ。心理学の古典を現代の神経科学の知識をもって読むと、アイデアの源になる。特におすすめなのがWilliam JamesのThe Principles of Psychologyだ。

 

The Principles of Psychology Book The Principles of Psychology

著者:William James
販売元:Dover Pubns
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Principles of Psychology Vol.2 Book Principles of Psychology Vol.2

著者:William James
販売元:Dover Pubns
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なんと言ってもあらゆるテーマを網羅している。アテンションの一節は特に有名だが、セルフ(自己)の問題についてや、時間知覚、記憶についてもいろいろなアイデアが書かれている。さらに、リアリティとはなにか、理性、本能、情動、自由意志などおもしろいことがたくさん書いてある。

明らかに、昔の本だから、現代の視点からは物足りないこともあるかもしれない。そのかわり、人間として人間の何を知りたいのかという問題意識を育てるのに役に立つ。

Helmholtzの本は、binocular rivalry中に知覚を自由にコントロールできると主張していることで有名だが、あまりアイデアの源にはならない。そのbinocular rivalryをどうやってコントロールしているのか知りたくて、目を通したけれど、たんに一生懸命、線の数を数えれば、一方だけを見続けることができた、などと書いてあるだけだった。あまりお勧めできない。

Kohler & Wallachの昔のfigural after-effectsの論文は今でもアイデアの源になる。あとそれほど昔ではないがDavid MacKayという、視覚のpsychophysicsをやったいる人がいる。たぶん、このひとがillusion発見王だろう。昔ということもあるが、現代の研究のテーマになっているようなこと(フラッシュラグなど)を数多く発見している。実は、MacKayがNatureに出した後、それほど一般にはやってないようなテーマもある。そういうのを現代版に焼き直して、神経科学と結びつく実験をすることでオリジナルな研究になることもあるだろう。

ちなみに、いまちょろっと調べたら、この本は買わなくてもウェブ上で読めるようです。


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On Intelligence

On Intelligence Book On Intelligence

著者:Jeff Hawkins,Sandra Blakeslee
販売元:Owl Books
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この本を読んだのは、一年以上まえだ。ちょうどその頃、意識の問題に挑む戦略として、「ダーウィン作戦」がいいかもしれないと考えていた。ダーウィンが「進化」という概念を提唱することで、「生命」という現象がシステムとして理解できるようになった。もしかしたら、脳科学において、生物学における進化に対応するようなアイデアがまだ出ていないから、意識という現象が理解できずにいるのかもしれない。だとすると、脳科学における画期的なアイデアというのを最初に出すことが重要だ。自分は、脳科学での事実を十分に観察して、あらたな概念にたどり着くような考察を加えているだろうか。積極的に、現在わかっていることから、あらたな概念を導きだすように考えることが必要ではないか。そう考えていた。

このジェフ・ホーキンス(Jeff Hawkins)の『On Intelligence』 は、まさに「ダーウィン作戦」で脳に挑んでいて、ショックを受けた。

日本語版は↓。(英語版しか見ていないから、日本語訳がいいかは知らない)

考える脳 考えるコンピューター Book 考える脳 考えるコンピューター

著者:ジェフ・ホーキンス,サンドラ・ブレイクスリー
販売元:ランダムハウス講談社
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そもそも脳のやっていることの本質は何か?というところから著者は考えている。著者の結論は、脳の主な機能は「経験や記憶に基づいた未来の予測」ということになる。神経科学の本として読むと、大雑把でやや内容は乏しいと思う人がいるかもしれない。

実際に、専門的には書かれていないが、Olshausenなどのスパース・コーディングやICAのような、unsupervised learningが念頭にあることは明らかだ。興味のあるひとが、ここからたどっていけるように、いくつか下に関連論文へのリンクを貼っておいた。

Olshausen & Field (1996). Nature
Olshausen & Field (2004). Curr Opinion Neurobiol.
Simoncelli & Olshausen (2001) Annu Rev Neurosci.
Bell & Sejnowski (1997). Vis Res.

それから、著者のジェフ・ホーキンス(Jeff Hawkins)の経歴がとても変わっている。この本によると、ずっと脳を研究したかったのだが、うまく大学院に行けなかったり、紆余曲折あって、エンジニアとして成功した後で、脳へカムバックしている。この人の経歴を聞くと、脳研究がしたいと思っていても現実的に直接関われずにいてどうしようかと悩んでいる人には、励みになると思う。

ジェフ・ホーキンスのダーウィン作戦が成功かというと、まだ、これで答えだと納得はできない。でも、細かい専門家しかわからない研究ばかりしてないで、新しい考え方を提唱するというのも科学者にとって大きな仕事だと思う。


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Buzsaki

Rhythms of the Brain Book Rhythms of the Brain

著者:G. Buzsaki
販売元:Oxford University Press
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この本は圧倒的に面白い。ただし、簡単に読める本ではない。ややプロ向けのテクストだといえる。しかし、ニューロサイエンスのプロの人は苦労してでも読むべき大作だと思う。

この本を読んでいると、クリストフ・コッホの『The Quest for Consciousness』を訳していて、脚注に詳細な情報が大量に盛り込まれているから、なかなか訳が進まなかったことを思いだした。BuzsakiもKoch並、あるいはそれ以上に、クドく情報を盛り込んでくる。おそらく、それはプロの読者を想定しているからだろう。プロの読者(科学者)というのは、常に関連した論文の情報を必要とする。それにしても、Buzakiの本は脚注が多くて、読んでもなかなか進まなかった。しかも、脚注に出てくる論文がおもしろそうで、元論文も読みたいが読みきれないほどだ。

基本的には、脳の中の振動現象(Oscillation)がメインのテーマだが、それよりも内容の幅の広さと、ここのテーマに対する洞察と知識の深さに圧倒された。

Buzsakiは章を普通の本のようにChapterと呼ばずにCycleと呼んでいる。最終章のサイクル13で、Buzsakiは意識(Consciousness)をどう考えているかを述べている。アプローチは違うが、Tononi (2004) の情報統合の理論と同じ結論にいたっている。神経のネットワークが意識を生み出すためには、ネットワーク内での情報の統合が重要だという考えだ。

その理論から、意識を持たない脳の部位の例として、小脳と大脳基底核をあげている。どちらも、局所的には神経間の結合があるが、空間的に離れたニューロン間の結合がない(別の言葉でいうと、スモールワールドネットワークになっていない)から、局所的に処理された情報が全体に伝わらない。そのような、ネットワークには意識は宿らないだろうといっている。

それから、最終章にいたるまでのCycleで、抑制性のニューロンから構成されるスモールワールドネットワークに、いかに周期的な神経活動の振動が生じるかなどが詳しく書かれている。スモールワールドになっていない小脳には、だから振動はない(周波数の高い振動はあるようなことも書いてあった)。

それから、フィードバックのループによる時間を越えての情報の統合が意識の生成に不可欠だといっている。

まとめると、局所的な情報処理を全体で統合することが重要。そのようなネットワークはリズムのある神経活動をもち、利用している。だから、意識と振動の関係は深い。本全体を読むと、もっと微妙な議論をしているが、強引にまとめるとこういう結論だろう。

意識についてはさほど書かれていないが、VanEssenの「何で脳が決まった形に折りたたまれるかについての仮説」 とか、自分が知らなかった論文があちこちにでてくることが面白かった。


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心の哲学について

 

今日、なにげなくThe New Yorkerを読んでいたら、哲学者のChurchland夫妻についての記事があった。なんか、すごくかっこいい夫婦のように書いてあった。たぶん、本当にかっこいい夫婦なんだろう。

その記事にも書いてあったけど、意識の問題を解決するのは哲学者ではなく、NeuroscientistだとChurchlandは言っている。なんで脳を科学的に研究していくことが大事なのかを説明するための例え話がでてきた:

(引用開始)

"You're Albertus Magnus, let's say. One night, a Martian comes down and whispers, 'Hey, Altertus, the burning of wood is really rapid oxidation!' What could he do? He knows no structural chemistry, he doesn't know what oxygen is, he doesn't know what an element is – he couldn't make any sense of it. And if some fine night that same omniscient Martian came down and said, 'Hey, Pat, consciousness is really blesjeakahgjfdl!' I would be similarly confused, because neuroscience is just not far enough along."

(引用終了)

まだ、現代の脳科学は化学にとっての酸素のようなものを見つけていないのかもしれない。

自分の中で、意識を研究するための哲学的問題は、ひとまず「あまり気にしない」という方針だ。それはここでChurchlandが言っているように、Neuroscienceが根本的に進まないことには、あれこれ考えても解決しないだろうと思うからだ。そして、科学が脳に関する事実を積み上げ、それに平行した情報理論の発展から、意識の問題に迫るアイデアがでてくるだろう。

いまから7年前に、チャルマーズの『意識する心』 を英語で読んだ。そのときは、まだ意識を研究したいが、いったいどうしたらいいのかと思っていたときだった。まだ、世界でどんな研究がなされているか、把握できずに日々勉強していた頃だ。(まあ、状況は今も同じようなものかもしれないけど。)

チャルマーズは哲学的な視点から、意識は科学では解明できないと主張して、ハードプロブレムと呼んでいる。その根拠は簡単に言えば、「主観的感覚(クオリア)が物理学の法則から導かれる性質のもの(supervenient on the physical)ではない」ということだ。意識というのを一つの新しい物理法則として付け加えるべきではないかとも主張している。その拡張の一環として、汎神論を提唱している。つまり、あらゆる情報処理をしているものは意識があると見なすべきではないかというのだ。温度計は、温度のクオリアを感じていると考えようというのだ。

 

意識する心―脳と精神の根本理論を求めて Book 意識する心―脳と精神の根本理論を求めて

著者:デイヴィッド・J. チャーマーズ
販売元:白揚社
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この議論でいつも気になるのは、温度計のどこからどこまでが温度計なのかということだ。分子1つ1つにクオリアがあると考えるべきなのか?もし、水たまりに映る景色が、水たまりによって意識されているのなら、どこからどこまでが水たまりなのかを物理的に定義する方法が必要だ。何らかの方法で、統一された情報の受け手であるセルフを構築しなければ、クオリアを持っている主体が存在しない。だから、情報を統合して「主体」というものを構成することが意識が生まれるためには重要だろうと考えていた。

上のような漠然としたアイデアにすることしかできなかったが、Tononiが情報理論を用いて上のような問題意識に答えてくれるような、意識の情報統合理論を提案している(Tononi (2004) )。

クオリアの問題に挑もうと考えている人は、一度はチャルマーズを読んで絶望感と、こんなに身近にエキサイティングな問題が潜んでいたという喜びを味わっておくべきだろう。私には、一瞬すべてのニューロサイエンスが無力に思えた。でも、今ではまずは、blesjeakahgjfdlを探すところから始めることの方が楽しいだろうと思うようになった。



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V.S. Ramachandran

Phantoms in the Brain: Probing the Mysteries of the Human Mind Phantoms in the Brain: Probing the Mysteries of the Human Mind

著者:V. S. Ramachandran,Sandra Blakeslee
販売元:Quill
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自分が意識を研究したいと自覚するようになったきっかけは、Journal of Consciousness Studies という雑誌に、ラマチャンドランが書いてた、クオリアについての論文を読んだことだったとおもう。

当時は、哲学的な問題というのはすべて脳の問題になって科学的に探求するものになるだろうと直感的に感じていたが、まだクオリアという言葉に出会っていなかったから、その直感を表現することはできなかった。クオリアという言葉と出会ったことは、脳科学をそれまでやりたいと思っていたのは、これだったのかという人生で最も印象深い経験だった。

それでラマチャンドランのことを知りPhantoms in the Brain を読み始めた。当時、私はこれから科学者として上を目指すために、興味のある本はできるだけ英語で読むようにしていた。いまでも、この本のあちこちに、辞書を引いた後や、アイデアの書き込みがあって思いで深い本だ。

人類の存在に関わる重要な問題が、世界には三つある。宇宙がどうやってできたのか、地球に生命がいかにして生まれてきたか、そして、脳からいかにして意識が生まれてくるのか。意識というのは、これらの科学にとってのファンダメンタルな問題の一つなんだっていうパッセージを読んで、意識を研究するぞって決心したのをいまでも覚えている。

すごく人間の核心にせまる深い内容をもっているのに、ものすごく楽しんで読めるところがすばらしい。実際、学会とかでのトークはまるでコメディーのショーをみているようだ。

個人的な意見では、最近のラマチャンドランはSynesthesia (共感覚)とかばかりで、あまり面白くない。ラマチャンドランにかつて興奮した一方で、これからラマチャンドラン式のアプローチで、新しい発見はそれほど出てこないかもしれないとも思っている。一般の人々までを興奮させるようなおもしろいアイデアと現象を見つけることは、難しくなっているように思えるからだ。それでも、ラマチャンドランの文章力には圧倒的なものがある。

二冊目の本も読んだが、一冊目と割と重なっていてそれほど興奮はしなかった。


Brief Tour of Human Consciousness: From Impostor Poodles To Purple Numbers Brief Tour of Human Consciousness: From Impostor Poodles To Purple Numbers

著者:V. S. Ramachandran
販売元:Pi Pr
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Current Biologyでのインタヴューで、「いままでで最もよかったアドヴァイスはなんですか?」と聞かれて、それはフランシス・クリックからのアドヴァイスだとこたえている。その内容がこれ。

(転載開始)

First, the importance of sheer intellectual daring — chutzpah. It is better to tackle ten fundamental problems and solve one than to tackle ten trivial ones and solve them all! Fundamental problems are not necessarily more inherently difficult than trivial ones. Nature is not conspiring against us to make fundamental problems more difficult.

Second don’t become trapped in a small, specialised cul-de-sac just because you feel comfortable or your immediate peers reward you for it. Don’t strive for approval from the majority of your colleagues, but only for the respect of those few exceptional people at the top of your field whom you genuinely admire. And never listen to ‘experts’ — recall how both Erwin Chargaff and William Bragg strongly discouraged Crick from pursuing DNA!

(転載終了)

「重要な問題に対する答えを見つけることが、必ずしも、どうでもいい問題に答えるより難しいとは限らない。」というところがいい。

 

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Libet

科学的手法で脳活動がいかに意識を生み出すかという問題に対するアプローチには、いろいろな種類がある。Binocular Rivalryなどをつかって、主観的知覚と物理的刺激を分離することで、電気生理とfMRIで知覚に対応する主観的知覚に対応する神経活動を見つけ出すというアプローチがもっとも直接的な手法といえるだろう。

その一方で、脳の中で時間(特にタイミング)がどのようにニューロンによって表象されているかという問題は、まだまだ研究していかなければならない分野である。

ここでは、ベンジャミン・リベットの『マインド・タイム 脳と意識の時間』という本(原題:Mind Time: The Temporal Factor In Consciousness )を薦めたい。

リベットは意識の生じるタイミングについて、脳内の活動が我々が世界を感じるときの時間感覚と対応していないと考えている。感覚刺激の入力によって引き起こされる一連の神経活動がそのままの順番で我々の知覚となっているわけではないという仮説だ。例えば、誰かに手のひらを触れられたときとか、テレビで場面が急に切り替わって別の人が映されたときに、感覚情報を司る脳の部位でtransientな反応が生じる。リベットのバックリファレル(back referrel)仮説では、transientな神経活動の内容自体は意識に直接のぼらないが、それより後で形成される安定した神経活動が意識にのぼり、その意識的知覚はその前のtransientな活動の時点から始まっていると脳内で解釈されているという考えである。その根拠として、リベットは人間のsomatosensory areaを直接刺激すると、主観的には知覚が生じたタイミングが、皮膚を触られた場合と比べて遅くなっているという実験をしている。皮膚からの神経伝達の時間などを考慮すると、直接脳を電気で刺激した方が、はやく知覚が生じても良さそうなのだが、実際にはその正反対の結果となっている。リベットは、脳を直接電気刺激した場合にはtransientな反応がないため、back referralが起こらずに刺激を感じ始めるタイミングが遅れてしまうと考えている。

このような知覚現象は現代ではたくさん知られている。例えばフラッシュラグ効果 を説明するためにDavid EaglemanPostdiction という仮説を提唱した。知覚の内容はその直後の出来事で再編集されるという考え方である。フラッシュラグについてはまた後日じっくり書こうと思う。

もう一つリベットの研究で面白いのは自由意志の問題だ。マインド・タイムは自由意志と上で述べた知覚のタイミングの話、それと最後にちょっとクレイジーな仮説から構成されている。正直なところ、その最後のクレイジーな仮説に説得力があるようには思えないが、科学的に検証可能(正しいか正しくないか実験で決着を付けることが可能という意味)ではある。

リベットの研究した問題というのは、ユニークでまだまだアイデア次第でおもしろい研究に結びつくようだ。リベットの個別の論点については、現代の視点からみると物足りない部分もある。それでも、意識にとって時間というテーマは深淵で常に新鮮な驚きを与えてくれる。


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